これから音楽制作を始めようと思っている方はきっと、数あるDAWの中から何を選べばいいのか分からないだろうと思います。ここでは、どのような基準でDAWを選べばいいのか、考えてみたいと思います。
DAWとは
パソコンを使って音楽を作る営みをDTM(ディーティーエム、デスクトップミュージック)と言いますが、DTMを行うために必要不可欠なソフトウェアがあります。DAWです。Digital Audio Workstation(デジタルオーディオワークステーション)の略で、多くの人は「ダウ」と読んでいると思います。(英語圏の人の中には、ディーエイダブリューと読んでいる人もいました。)
DAWは、録音、編曲、作曲など、音楽制作全般を行うための統合的なソフトウェアです。「統合的な」と言うのは、音源、MIDIシーケンサー、ミキサー、エフェクターなどなど、音楽制作に必要なツールがすべて、1つのソフトウェアに統合されていることを意味します。
音楽スタジオ全体の機能がDAWという1つのソフトウェアで実現されている、と考えればいいでしょう。そう考えると、(仮想的な)音楽スタジオが数万円で買えるのですから、夢のような時代です。こんないい時代に音楽を作らないなんて、もはや信じられないくらいです。
DAWの人気投票
人気投票を見てみましょう。まずは海外です。音楽制作者向け情報サイトMusicRadar(ミュージックレイダー)の「The best DAWs 2020: the best digital audio workstations for PC and Mac」によると、ベスト5は以下の通りです。
- FL Studio
- Studio One
- Ableton Live
- Reaper 6
- Cubase
日本はどうでしょうか。DTM情報サイトSleepfreaks(スリープフリークス)の「人気DAWソフトランキング2020年結果発表!3952人に聞きました」によると、ベスト5は以下の通りです。
- Cubase
- Studio One
- Logic
- FL Studio
- Ableton Live
ちなみに、ベスト6~10には、両調査あわせて以下のものが挙がっています。
- Logic Pro
- Reason
- Cakewalk by BandLab
- Bitwig Studio
- Acoustica Mixcraft
- GarageBand
- Pro Tools
- Maschine
- Reaper
まずは、身近な人が使っているものを選ぶ
MusicRadarとSleepfreaksのベスト5に共通するDAWは以下の4つです。
- FL Studio
- Studio One
- Ableton Live
- Cubase
初めてのDAWは、これら4つのうちから選べば問題ないでしょう。でもどれを?
私が思うには、身近な人が使っているものを選ぶのが一番だと思います。友人、知人、家族、先輩、師匠など、身近な人が上記のいずれかを使っているのなら、それを選ぶのがいいのではないでしょうか。なぜなら、使い方を尋ねられるから。
DAWの機能・性能といった本質的な事情を考慮するよりも、こういった周辺の事情を考慮したほうが正解に近づけるだろうと私は思います。機能・性能に大差はないだろうと思うからです。多少は差があるかもしれませんが、一長一短ということになるでしょう。ある点ではFL Studioが優れているが、別のある点ではStudio Oneが優れている、みたいなことになっているのだと思います。
私のおすすめはStudio One
DTMのことを質問できる身近な知り合いがいないのなら、Studio One(スタジオワン)をおすすめします。私は2013年からStudio Oneを使い続けていますが、これまで、不満に思ったことが一度もないからです。
他のDAWと比較したわけではないので、Studio Oneがベストだと言っているわけではありません。しかし、少なくとも私は満足して使い続けています。だからあなたも満足できる、という論理にはなりませんが、これといった決め手がないのなら検討してみてください。
なぜStudio Oneを選んだのか
2013年に私がStudio Oneを選んだのには理由があります。それは、Studio Oneが新規に開発されたDAWだからです。
当時私は、64ビットで処理されるDAWがいいだろうと考えました。そこで思うには、古くからある伝統的なDAWはおそらく、32ビット時代のソフトウェア資産を修正・拡張する形で64ビットバージョンを実現しています。
それに対してStudio Oneは、最初から64ビットバージョンを作るつもりで設計されているのだとか。それを知ったとき「これだな!」と思ったのです。古い資産のしがらみのない、スマートな設計・実装がなされていると期待できるからです。
もうひとつ。Studio Oneは「ドイツの凄腕プログラマー達がデザイン」したのだとか。私は昔から「ドイツ製」を信頼しているので、この点にもグっときました。
興味のある方はStudio One公式サイトを参照してみてください。
電子系の音楽を作る人にはFL Studioもおすすめ
私はよくYouTubeで、DTMのチュートリアル動画を見ます。その際には、
how to make 〇〇
と検索します。〇〇のところには、「techno」「house」「trance」「edm」「dnb」など、電子系音楽のジャンル名が入ります。
このように検索すると、DAWを使って解説する動画がわんさか出てきます。そして、気づくことがあります。それは、FL Studioを使っている動画が多いということ。圧倒的に多い、と言ってもいいでしょう。海外の人気投票で第1位を獲得しているだけのことはある!
で、そういう動画を見ていると、なんだか使いやすそうだなと思うわけです。Studio Oneがもし世の中から消えたとしたら、私はFL Studioを使うだろうなと思います。そんなわけで、FL Studioもおすすめです。特に、電子系の音楽を好む人には使いやすいように思われます。
興味のある方はFL Studio公式サイトを参照してみてください。
にわかに気になるCakewalk by BandLab
今回いろいろなDAWを調べてみてその存在を初めて知ったCakewalk by BandLabが、ちょっと気になっています。かつて「SONAR」という名で販売されていたもので、いまやフル機能版が無料なんだとか! 私がいま初めてのDAWを探している状態にあるのなら、最初に試してみるかもしれません。
興味のある方はCakewalk by BandLab公式サイトを参照してみてください。
まずは無料版を試してみる
そんなわけで、私はStudio OneとFL Studio、そしてCakewalk by BandLabを推しているわけですが、ほかのDAWのほうが自分には合う、と感じる方もいることでしょう。結局のところ、自分で試してみて自分で判断する以外にありません。
それならこの記事はなんのためにあるんだよ? と疑念をお持ちの方もいらっしゃるでしょうが、この手の記事は、何から試すかを決めるためにあるのだろうと思います。いろいろな記事を参考にして優先順位を見出し、あとはその順に試していく。そうやって決めるのがいいんじゃないかと思います。
幸い、多くのDAWには無料版やお試し版が用意されています。興味のあるDAWを、よさそうに思う順に、ぜひ試してみてください。以下に、無料版・お試し版へのリンクを示します。
- Studio One:Studio One Primeという無料のエディションが用意されています。無期限に使える機能限定版です。
- FL Studio:無期限に使えるトライアル版があります。多少の機能制限があるものの、制限はかなり緩いようです。
- Cakewalk by BandLab(旧SONAR):正規版が無料
- Cubase:30日トライアル版
- Logic Pro:90日トライアル版
- Ableton Live:90日トライアル版
- Reason:30日トライアル版
- Bitwig Studio:無期限の機能制限版
有料版もあらかじめ視野に入れておく
無料版を使ってみて「これはいけそうだ」と思ったら、当面はそれを使って音楽を作っていくことになるでしょう。そして徐々に使いこなせるようになっていきます。そこでぶち当たるのが、「これじゃ物足りない」という不満。
多くの(ほとんどの?)方が、より上位のエディションを使いたくなってくるでしょう。Studio Oneであれば、最上位のProfessional版を使いたくなってくると思います。期間限定版は当然ですが、無期限に使える機能制限版であっても、ずっと使い続けることは実際問題、できないでしょう。より多くの機能を使いたいと思うに違いないからです。
ですので、どのDAWであれ試してみる際には、上位エディションについてざっと把握しておくことをおすすめします。どんなエディションがあり、それぞれいくらで買えるのか。そのあたりのことを、将来の自分のためにあらかじめ把握しておきましょう。
まとめ
初めてのDAWを検討している方は、以下の順に試してみることをおすすめします。
1.身近な人が使っているもの
2.Studio One
3.FL Studio
4.Cakewalk by BandLab
これらを試してもピンとこなかったのなら、「DAW 無料」などと検索して、出てきたものを片っ端から試してみましょう。そのうち、「これは使いやすいかも」と思えるDAWに出くわすはずです。あとはそれを使って音楽を作るだけ。
それでは皆さま、よいDTMライフを!
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