自作曲を作ったのなら、その曲のPV(プロモーションビデオ)を作ってYouTubeに上げたいと思うのが人情。そしてそのPVは、できれば曲のリズムとシンクロさせたい。そう思うことも少なからずあるでしょう。
音楽と映像とをシンクロさせるために、ぜひとも知っておきたい知識があります。BPMとFPSです。ここでは両者の関係を説明し、曲の1拍は動画の何コマなのかを求めます。この答えが、シンクロした動画を作る際の鍵になります。
曲と映像がシンクロしている例
まずは曲と映像がシンクロしている例を見てみましょう。私の曲で恐縮なんですが、たとえば、次のようなものです。四角いマス目の明暗とビートとがシンクロしている点に注目してください。
曲の1拍が何秒かをBPMから割り出す
上記のようなシンクロした動画を簡単かつ正確に作るには、曲の1拍が動画の何コマ分に等しいかを把握するのが得策です。そしてそのための第一歩は、曲の1拍が何秒かをBPMから割り出すことです。
BPM(ビーピーエム)というのは、曲のテンポを表す単位。Beats Per Minuteの略で、1分間(=60秒間)が何拍であるかを示します。例えば174BPMであれば、1分間に174拍が奏でられます。ということは、1拍が占める秒数は
60/174秒
となります。ポイントは、この値を次のように分母が30くらいの分数で表すこと。
60/174 = 30/87 = 10/29
なぜ分母を30程度にしたいのかと言うと、それは、動画のフレームレートを30FPS程度にしたいからです。この段階ではなんのことやらだと思いますが、とりあえず次の説明に進んでください。
動画のぬるぬる度を表すフレームレート
一般に動画は、複数の静止画を連続して表示することで表現されます。パラパラ漫画と同じ原理です。
動画を構成する静止画をコマと言い、単位時間あたりに表示されるコマ数をフレームレートと言います。フレームレートは通常、FPS(Frames Per Second)という単位で表されます。これは、1秒間に何コマの静止画が表示されるかを示しています。
YouTubeなどの動画は30FPSで、ぬるぬる動く近年の3Dゲームなんかは60FPSです。12FPSとかの動画はたぶん、カクカクした感じの動きになると思います。楽曲のPVであれば、30FPSあたりのフレームレートで十分でしょう。
曲のBPMから、動画のフレームレートを割り出す
ここで、先のBPMに戻ります。174BPMの場合、1拍は10/29秒でした。そこで、この曲のPVのフレームレートを、1拍の分母と同じ29にしてみましょう。つまり、1秒間を29コマで構成するということです。
ここで問題です。10/29秒(1拍)は、何コマで表されますか?
1秒間を29コマで構成しているのだから、1コマは1/29秒。ということは、10コマはその10倍の10/29秒。つまり、10/29秒は10コマで表されます。
1拍何コマ問題の解き方、まとめ
曲の1拍が動画の何コマなのかを求める方法をまとめるとこうなります。カッコ内は、174BPMの場合の値です。
- BPM(174)から、1拍あたりの秒数を分数で求める(60/174秒)
- その秒数を、分母が30程度の分数A/Bで表す(10/29秒)
- 動画のフレームレートをBにする(29FPS)
- そうすると、1拍はAコマとなる(10コマ)
曲の拍に合わせて動画を編集する
曲のBPMに適したフレームレートが分かったら、そのフレームレートで動画を作成し、編集していきます。
曲の1拍が動画の何フレーム分に相当するかが分かっているので、曲の切れ目の正確なタイミングで文字を出すとか、場面を切り替えるといった処理が容易にできます。
YouTubeに上げる最終的な動画は30FPSに調整されると思いますが、動画の編集作業は都合のいいフレームレートで行うとやりやすいでしょう。
このやり方のコツはBPMの取り方にある
BPMとFPSの対応をうまく取るためには、BPMを具合のいい値にすることが重要です。BPMをXとすると、
60/X
という分数が、30あたりの分母の分数に約分できる必要があります。そういった約分をしやすいのは、60とXに共通の約数が多い場合です。60=2×2×3×5なので、2、3、5のいくつかを約数に持つ値をBPMにするのがお勧めです。
たとえば170~174あたりのテンポにしたい場合を考えます。素因数分解してみれば、60と共通の約数が分かります。
- 170=2×5×17
- 171=3×3×19
- 172=2×2×43
- 173
- 174=2×3×29
173は素数なので、キリのいいFPSを見出すことはできません。173以外なら、次のような分数が得られます。
- 60/170=12/34(わりといい)
- 60/171=20/57(57は大きすぎ)
- 60/172=15/43(43も大きい)
- 60/174=10/29(ちょうどいい)
曲とシンクロしたPVを作りたいと最初から思っているなら、上記のような計算をざっと行い、174BPMを選ぶでしょう。シンクロすることを考えていないなら、気持ちがいいなと思うBPMを無邪気に選ぶでしょう。
BPMとFPSの対応表
BPMとFPSの対応をいくつか取り上げ、表にまとめてみました。ご参考までに。
BPM | 1拍の秒数 | 約分した値 | FPS | 1拍のコマ数 |
80 | 60/80 | 21/28 | 28 | 21 |
90 | 60/90 | 20/30 | 30 | 20 |
100 | 60/100 | 18/30 | 30 | 18 |
110 | 60/110 | 9/33 | 33 | 9 |
120 | 60/120 | 15/30 | 30 | 15 |
130 | 60/130 | 12/26 | 26 | 12 |
140 | 60/140 | 12/28 | 28 | 12 |
それではみなさま、よいDTMライフを!
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